四国遍礼道指南増補大成
 
廿三番・薬王寺

 {背後は山。南向き}海部郡医王山無量寿院と号する。行基菩薩の開基。空海が訪れ、薬師如来像を作って安置した。{秘仏。}塔の本尊は千手観音で脇士に二十八部衆が並ぶ。これらは行基の作。
 西に六十余町離れた場所に奥の院がある。奇怪な岩屋に、空海作の本尊を安置している。奇瑞が起こった場所だ。
 詠歌「それ人の病みぬる歳の薬王寺 瑠璃の薬を与えましませ」
 以上が阿波霊場。次から土佐霊場となる。東寺まで二十一里。このうち十里が阿波。かた村、よここ村【日和佐トンネルが「よここ峠」。付近の村であろう】を通って山川内村には打越寺なる真言宗の道場があって、遍路を労ってくれる。国主が建てた。少し行って寒葉坂を越えると、橘・小松・ほとり・河内・牟岐浦。日和佐から山や谷、川が多い。間に、阿部坂がある。浅川まで二里。この間に八坂・坂中・八浜・湊中がある。内訳は、阿部坂{昔あふ坂で行基菩薩がサバという、ふざけた馬追男と行き会った。どのような方便を講じようとしたのだろうか、生臭物は食べないはずなのに、行基は男に鯖を一本くれるよう頼んだ。男は怒って行基を罵った。行基は歌を詠んだ。「あふ坂や 八坂の中 鯖一つ行基にくれで 駒ぞ腹病む」。忽ち男の馬が倒れた。男は驚き、このように尋常ではない人を知らないのは下賤の者だたかだと無礼を詫びた。行基は再び歌を詠んだ。「あふ坂や 八坂の中 鯖一つ 行基にくれて 駒ぞ腹止む」。馬は飛び上がって、何もなかったかのようだった。行基菩薩が同事の済度をしたのだ。由緒のある場所だ。}・内妻・松坂・古江・しだ坂・福良村・福良坂・鯖瀬村・はきの坂・坂中大砂浜。鍛冶屋坂・あわの浦坂を過ぎると天神宮がある。満潮時には伊勢田川を川上に回って渡るとよい。伊勢田村・浅川浦では大道から左に町がある。イナ村には宿を貸す善人がいる。
観音堂がある。からうと坂。これまで八坂・坂中・八浜・浜中。免許村に大師堂がある。村はずれから東に海浦。奥浦、鞆浦とも呼ぶ。町や湊が賑やかだ。この町へ入り大道へ出ると遠回りになる。奥浦から那佐村へ出る。{大道へ出ると回り道になるので、奥浦橋の本屋右衛門作・鞆浦の島屋久佐衛門の二人は、共に成仏道のため、奥浦から那佐村に抜ける直進路を建設した。}免許村からの間に川がある。{奥浦へ行くにも、この川を渡る。}高曽根村には大師堂がある。次に母川。{空海が巡礼したとき、日照りで山の妖怪の鬚も焦がれ川の魚もいなくなったというのに、一人の女が遙々と山奥で水を汲んで帰っていた。空海が一滴を請うと女は、日照り続きで幼子一人二人の渇きを見るに忍びず命懸けで岩窟から汲んできた水ではあるが、幸いに今日は母のきぎの寿なので、坊様に差し上げようと言って、惜しげなく空海に水を与えた。女の誠の慈悲水に、空海が加持すると、水は溢れて月浮かぶ川となり、どんな日照りでも涸れることがない。}那佐坂・那佐村・宍喰浦には町がある。{町の入口の右に祇園社がある。}円頓密寺は、守護が遍路のために建てた。川を渡った古目には、阿波国境の番所がある。往来切手を改める。行き過ぎて坂になり、阿波と土佐の国境の峠に出る。甲浦からは土佐領。入口に番所があり、土佐一国の書き換えが渡される。{町の中には社がある。}傍らには町があり、湊が立派だ。白浜町には{明神}社がある。川に出ると、標石がある。甲浦坂、これは生見坂とも呼ぶ。生見村、相間。この間に{沖の岩に法然上人が書いた阿弥陀仏の名号があり、干潮時には見えると言い伝えられている。}小さな坂がある。野根浦には宿を貸す善人がいる。浦の入口に神社と大師堂がある。{五郎右衛門が宿を貸す。ほかに篤志の人が多い。}買い物に便利な町だ。町の前には川がある。伏越番所で甲浦で受け取った切手に裏書きをする。伏越坂から一里余りは、とび石と呼ばれる海辺。入木村に八幡宮。先に通った浜の浦手から四里。尾崎村・鹿岡坂村を通る。椎名村・上三津村を過ぎ、下みつ村から東寺まで二十町。{見所が多い。まず大穴は、奥行十七八間、高さ一丈から三四丈、幅は二三間から五・十間。太守が石を穿って五社神社を建立した。愛満権現と称する。かつて岩屋には毒蛇がいて人や家畜を襲った。空海が訪れ毒蛇を退散させた後、権現を安置した。東には太神宮もある。行き過ぎると霊水がある。亡者に手向ける水だ。更に行くと聞持道場・庵が建っており、背後に奥行五七間の岩窟がある。本尊は高さ二尺の如意輪観音座像。龍宮から上がったものだという。厨子も石製だ。脇士は二尺六寸の仁王像。厨子の両扉も石で出来ており、天人の姿が浮き彫りになっている。神仏の権化でなければ、どうしてこのようなことが出来ようか。このほか、龍灯が時として上がり、無限の霊威を感じさせる幽境だ。}本尊は石仏の如意輪観音像で、龍宮から上がったものだという。東寺は女人禁制であるから、ここで女性は札を納め、海辺から津呂浦へ向かう。男性は、東寺までの七町坂を上る。この坂にも霊地が多い。
                              
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