四国偏礼道指南増補大成【伊予分】
 
   豫州(よしう)  廿六ケ所
四十番観自在(くはんじざい)寺【指南に「平地。南向」】 平城山薬師院といふ

大師寺を立御長一尺二寸立像の薬師を作り
本尊として薬師院といひわきに観音をおき
給ひ観自在寺と云
【本尊図】しんくわんやじさいの春に花さきて
     うき世のかれてすむやけだもの
是より【異体字】いなりへ道筋(みちすじ)三つ有。一ハなだ道十三里。一ハ
大かんとうこえ十三里。一ハさヽ山ごへ十四里半【三すぢとも岩ぶち満願寺ニ至ル】。
先(まづ)なだ道山路谷あひ。なかす。する木。かし
わ此間二里坂。上はたち。下はたち。はうわら

あミた堂【指南に「やどかす」】。いわ松。いわふち。満願寺(まんくわんし)○次に中
道ハなか月。大がんとう坂二里。さうす村。小がん
どう坂三里。ひで松村。いわふち【指南に「まんぐハんじ」】○次に篠(さヽ)山越
ひろミ村。いたを村。まさき村【指南に「この村庄屋代々とざさぬなり。ありがたきいわれ有。たづねらるべし」】。はらい川【指南に「垢離してさヽやまにかくる」】
○篠(さヽ)山観世音寺本尊十一面御長五尺【指南に「立像」】【指南に「寺より三町西に天狗堂」】山上
熊野(くまの)三所権現(ごんげん)【指南に「此所に札おさむ」】わきに池あり霊異(れいい)にして諸
病此さヽを用ゆ【指南に「矢はづの池。中に恠異の石有。池をまわりにさヽ竹有。夜ことに龍馬きたりてはむよし。諸病によしとて諸人もちさる。馬のやむに猶よしといひつたふ」】坂一里。まき川村(ぜん人あり)番所切手
あらたむ【指南に「大師堂あり。庄屋長右衛門やどかす」】。みうち村(庄や宿ほどこす)【指南に「庄屋伊左衛門やどかす」】。野井村坂(ぜん人おほし)【指南に「岩淵村。満願寺。山をひだりにし東むき。宇和郡つしま郷。本尊薬師。行基作。秘仏。うた よろずよのねがひをこヽに満願寺ほとけのちかひたのもしき哉 この寺八十八ケの中にあらずといへども。大師草創の梵宮にて。そのかミハ大がらんなりしが。はゑとし久しくつくるになん々々とす。今出す所の霊場記。此道しるべ両通の料物をあつめ。彼寺をしゆりせん事。真念念願。序のごとし。△四国遍/ギョウニンベンに扁/礼霊場記 四巻△四国遍路道しるべ全。野井村くハん音堂有。此村伊左衛門延宝年中七とせの間。遍路に足半をほどこし志ふかき人宿かす。過て地蔵堂有。のいのさか」】。いわゐのもり
村【指南に「地蔵堂」】。ひえ田。より松村【指南に「毘沙門」】是より宇和嶋(うわじま)城下(じやうか)【指南に「迄なミ松よき道也」】道

城下の町入口願成(ぐわんじやう)寺【指南に「又ハもといぎともいふ。由緒有てら也。本尊大師の御影。札を打なり。すこしゆき」】。橋有番所切手あらたむ【此城下に三十三所のくハんおん有。調物自由。町の】
出口にも番所あり。橋わたり左【指南に「かたはら町を」】へ行。下村(ぜんにん有)こん
屋庄兵衛代々宿(やど)かす此時に和魂(れい)明神の宮
あり。なかあいた村【指南に「此所八幡有」】ミづま村【指南に「此間としに七度なる栗有」】むた村【指南に「大師堂」】窓(まど)峠坂とかり村
四十一番稲荷(いなり)【指南に「南むき」】 宇和郡 此神元来大師と
御やくそくありて密教(みつきやう)守護(しゆご)なり【指南に「本尊十一面立長一尺作者不知」】
【本尊図】此神ハ三国流布(るふ)の密教(みつきやう)を
     守り給ハんちかひこそきく
是より仏木寺迄三十町。なかゑ村【指南に「観音堂。大師堂」】。

宇和郡すなハち村
四十二番仏木(ぶつもく)寺【指南に「平地。ミなミむき」】 此寺大師こヽにいたり給ふ時
右楠(くすのき)の上にひかりあり一■【果に頁】(いつくわ)の宝珠(ほうじゆ)也大師
楠をきり大日を作り其宝珠を納(おさ)め一■【果に頁】山
毘盧舎那(びるしやな)院と名づくかの楠木乃かふ
くつる事なし故(ゆへ)に仏木寺といふ
【本尊図】(坐像四尺)草も木も仏になれる仏木寺(ぶつもくじ)
           なをたのもしき鬼畜人天(きちくにんてん)
是より【異体字】あけいし寺迄三里。はなか坂。下河(しもかわ)村川

有。かいた。いなんぼう村。宇和郡あげいし村【指南に「此間明石といふ大石これを白王権現といふ此石には色々しさひあり」】
四十三番明石(あけいし)寺【指南に「山上たにあい南むき」】 源光山円手(ゑんしゆ)院と云本尊
千手観音坐像御長三尺作者不知【指南に「唐仏」】さし入に
白王権現の石有光すなハち明石といふ物也
【本尊図】聞(きく)ならく千手のちかひふしぎにハ
     大ばんじやくもかろくあげいし
是より【異体字】すがう山迄廿一里。うの町調(とヽのへ)物よし【指南に「大師堂有」】。下
まつは村。上まつは村。あう江村。東たヽ村
番所切手あらたむ。とさか村こヽに宇和と大洲(す)

の境すぎて坂二里有【指南に「八町ほどのぼり。それよりくだる」】。北たヽ村此間小川【指南に「二瀬」】有。
大洲(す)城下調(とヽのへ)物よし【指南に「町はづれに大川有。舟わたし。わたりて十王堂。侍やしきも有」】。下村【指南に「町」】。わかみや村(せん人あり)【指南に「こヽに大師堂有。甚之助やどかす。ゆき過とよか橋。ゆらい有」】都谷(とや)が
橋。にゐやの町【指南に「調物よし。はたご屋も有」】。【指南に「くろち村。いづミがたう坂」】くろうちぼ坂。内のこ村右へんろ道
川わたり。ちせ坂。むらさき村坂【指南に「此間中戸坂」】。五百木(いもき)村。あふ
せ村【指南に「大師堂」】此所に寿松庵(しやうせうあんと云あり先祖(せんそ)遍礼(へんろ)人の
ため立たり)【指南に「雲林山寿松庵是有。此ところにすまいする曽根の清左衛門先祖経営して永くミほとけの御弟子に奉り辺ろの人を憩しむる所とせり其人のよめるとて歌ににたる事有 白妙のくもの林のこなたより寿松に夢さむるかな」】。川のほり村【指南に「阿ミだ堂有」】。むめつ村【指南に「薬師堂」】。下たど村。中
たど村(せん人有)【指南に「八幡宮」】。上たど村【指南に「過て」】三嶋明神。うすき村【指南に「大師堂」】。二明(にみやう)村【指南に「爰にかつらき明神。行てはしわたり大師堂」】
此さきにひわた坂【指南に「此峠より久万の町すがう山見ゆ」】大洲領(れう)松山領境(さかい)也【指南に「但此村よりうすぎの間天然の幽景目をおどろかす」】。久間
の町【指南に「荷物おきすがう山并いわ屋へまうづ。此町ハ辺路をあわれむ人多し。調物自由なり」】。浮穴(うきあな)郡すかう村

四十四番菅生(すかう)山【指南に「山上南むき」】 大宝(ほう)寺大覚(かく)院といふ此寺
人王(にんわう)四十二代文武(もんむ)天皇(てんわう)大宝元年に始り即(すなはち)な
の示とをり本尊生(しやう)する菅をしきましますにより
山号とすとなん本尊十一面観音立像御長四尺三
寸也【指南に「天竺より百済。百済より当山来」】大師霊(れい)を感じ給ひ奥院(おくのいん)を開(ひら)き岩屋(いわや)寺と云
【本尊図】今の世ハ大ひのめくミすかうさん
     つゐにハ弥陀のちかひをそ待(まつ)
是より【異体字】いわや迄三里【指南に「此間峰の堂。坂。峠に地蔵堂有」】。はたの川此所に荷物(にもつ)
おき岩屋へ行。住吉薬師堂ゑんま堂過(すき)て右

の道へ行是より【異体字】岩屋へ一里山坂おかミ所おほし
四十五番岩谷(いわや)寺【指南に「ひがしむき」】 浮穴郡 海岸(かいがん)山と云此寺
名にあふ岩のすがた奇怪(きくわい)いふべからすふしぎの
所あまた有本尊石仏不動明王大師御作【指南に「秘仏」】
【本尊図】大聖のいのるちからのけにいわや
     いしの中にもこくらくぞある
是より【異体字】じやうるりじ迄八里。岩屋より【異体字】下向(げかう)下道
を行【指南に「ふもとに家里ひとつ。橋。又橋ひとつすぎて古岩屋。先亡回向する所也」】右のはたの川へもどり住吉社より【異体字】右へわかる
是より【異体字】浄(しやう)るりへ五里。ゆさの村。東明神村。西明

神村坂あり此峠(とうげ)より【異体字】見るに松山の城三津乃
湊いよの小冨士(ふし)しま山近く出船(でふね)つり舟あり
坂本に茶屋大師堂(やどほどこす)有【指南に「見坂となづく。此峠より眺望すれバちとせことぶく松山の城堂々とし。ねがひハ三津の濱浩々乎たり。碧浪渺洋。中にによ川と伊与の小富士駿河の山のごとし。ごヽ島。しま山。山島。かす々々の出船つり船やれ々々扨たばこ一ぷく。くだり坂半過。桜休場の茶屋。大師堂。是堂ハ此村の長右衛門こんりうしてやどをほどこす」】。ゑの木村【指南に「地蔵堂」】。くほの村【指南に「こヽに大師堂」】。く
たに村に川【指南に「小川」】有。浮穴(うきあな)郡浄(しやう)るり村
四十六番浄瑠璃(しやうるり)寺【指南に「平地。ひがしむき」】 医王(いわう)山養珠(やうしゆ)院といふ
本尊薬師日月光十二神作者しれず【指南に「秘仏。行基作」】
【本尊図】極楽のしやうるりせかいたくらへハ
     うくるくハらくハむくひならまし
是より八坂迄五町。八坂村

四十七番八坂寺【指南に「平地。ひがしむき」】 熊谷山妙見院と云本尊
阿弥陀坐像御長三尺恵心の作恵心ハ大師の
後(のち)凡(およそ)三百年ほど也むかしの事しれず
【本尊図】花を見て哥よむ人ハやさかてら
     さんふつせうのゑんとこそきけ
是より【異体字】西林寺(さいりんし)迄一里。ゑわら村【指南に「大師堂有。此村の南に右衛門三郎の子八人のつか有。石手寺の縁起にくハし」】。小村【指南に「大師堂」】川三瀬(せ)有
たかゐ村善人(せんにん)おほし【指南に「九郎兵衛。吉左衛門其ほかもやどかす」】
四十八番西林寺【指南に「平地。南むき」】 清涼(しやうりやう)山安養(あんやう)院本尊十一
面観音立像御長三尺大師御作

【本尊図】弥陀仏の世界をたつね聞たくバ
     にしのはやしのてらへまいれよ
是より【異体字】浄土寺(じやうどし)迄廿五町。土井村。たかのこ村
四十九番浄土寺【指南に「山をうしろ。南むき」】 久米(くめ)郡 西林山三蔵(そう)院と云
此寺人王四十六代孝謙(かうけん)天皇の勅願(ちよくくわん)といへり
本尊釈迦(しやか)行基(きやうぎ)の作なり【指南に「秘仏」】
【本尊図】十悪のわか身をすてすそのまヽに
     じやうどのてらへまいりこそすれ
是より【異体字】はんたし迄十五町。此間八まんの宮(みや)あり【指南に「しんだて町」】

過て【指南に「右へ」】しるし石有。温泉郡はたてら村
五十番繁多(はんた)寺【指南に「平地。西むき」】 東山瑠璃光(るりくわう)院と云是
は孝謙(かうけん)天皇の御願といへり本尊薬師立像御
長三尺行基の作護摩(ごま)堂本尊不動明王
伝教(てんきやう)大師の作なり
【本尊図】よろづこそはんたなりともおこたらす
     しやびやうなかれとのそミいのれよ
是より【異体字】石手寺迄廿町【指南に「少行八まんの宮過て大道。遍路ハ右へ行」】。けば町。石手村
五十一番石手寺【指南に「うしろ山。ひがしむき」】 温泉(うんせん)郡熊野山と云本尊薬

師坐像御長二尺五寸行基(きやうき)の作此寺当国(とうこく)
右衛門三郎手に石をにぎり生(うま)れて国司(こくし)河
野(かうの)氏(うち)の男(なん)と成ル取立(とりたて)石手寺と云といへり熊
野権現を勧請(くはんしやう)し山号とす
【本尊図】西方をよそとハ見まし安養(あんやう)乃
     てらにまいりてうくる十らく
是より【異体字】大山寺迄二里【指南に「少行やくし堂過て河野の古城湯月となづく。今竹ばやしと成。外堀有。次領主の氏神。ふもとハ社家。同所に一遍上人の寺有。過て」】。道後(たうご)の湯(ゆ)【指南に「景行天皇より代々の天子行幸有て浴し給ふと日本紀に見えたり。推古の御宇。聖徳太子も来給へり。源氏物がたりにいよのゆげたとかきしも此所なり。湯つぼすべて五つ。先かぎゆとて雑人ハいらず。此湯の中にやくします。御足の下より湯出る事谷川のごとし。二の湯女。三の湯おとこ。第四はやうじやう湯とて男女へだてなく諸国湯治の人夜日をきらわず。第五のハ非人并に牛馬入なり。湯のわきに玉の石とてまろき石有。此石に歌あり。伊予の湯のほとりにたてる玉の石これぞ神代のはじめなりけり ゆげのうた いよハ神ゆの井げたハいくつ左右ハこヽのつ中ハ十六 又 いよハ神ゆの井げたハいくつ数しらず覚へずよます君やしらなん くハしくは湯屋明王院に記有之。爰町すこし有。松山城下へこれよりひだりへ行。少まわりなれども。諸事自由なるが故に出てよし。それより三津のはまへ一里。なミき。湊町にて賑し。舟屋多し。太山寺へハ古三津よりすぐ道も有。すぎ小坂有」】。松山城下(しろした)へこヽ
左へ行。それより【異体字】三津の濱(はま)へ一里。なミきみなと
町。松山へよらぬ時ハ。道後(とうこ)より【異体字】山こえ村【指南に「是ハ道後より右への道なり。此所に正月十六日桜とて毎年此日にあたり爛漫するなり。ゆへになづく。寺数おほく有ゆへに寺町ともいふ」】。たに

村【指南に「此所にむろおかやまとてよこ堂。本尊薬師。諸辺路札打也」】。あんしやう寺村大山寺村本堂迄八町惣門有【指南に「ふもとに茶屋あり」】
五十二番太山寺【指南に「少山上。みなミむき」】 和気(わけ)郡瀧雲(りううん)山護持(ごち)院と云
聖武(しやうむ)天皇御建立(こんりう)本尊十一面観音立像御長
六尺【指南に「二分」】行基(ぎやうき)の作元来唐(から)よりゑ給へる小像あ
りしを今の像を作りて入給ふとなり
【本尊図】太山へのぼれハあせのいでけれど
     のちの世おもへバなにのくもなし
是より【異体字】ゑんミうやう寺迄十八町。和気(わけ)郡わけ濱(はま)村
五十三番円明寺【指南に「平地。みなミむき」】 須賀(すが)山正智(しやうち)院と云是も

行基ぼさつはしめ御長三尺五寸の弥陀を
本尊とし給へり
【本尊図】来迎(らいかう)の弥陀(みだ)の光りのゑんミやうし
     てりそふかげハよな々々の月
是より【異体字】ゑんめいじ迄九里ほり江村。あわゐ坂(せん人あり)。やな
ぎはら村【指南に「町有」】。ほうでう村町有【指南に「町中に橋有」】。かうの坂【指南に「ふもとに大師堂」】。あさなミ
村番所切手あらたむ。まと坂。ひろいあけ坂此間
一里【指南に「此間一里余むらなし」】。きくま村【指南に「町有。此間小川有。行て」】。たちは坂。たね村。さかた村。しん
町。縣(あがた)村爰(こヽ)に松山札の辻(つぢ)より【異体字】十里と云一里づか

ありしるし石有
五十四番延命寺【指南に「少山上堂有。南むき」】 近見山不動(ふどう)院本尊坐像(ざぞう)
不動明王御長二尺行基の作
【本尊図】くもりなき鏡(かヽみ)のゑんとながむれハ
     のこさずかけをうつすものかな
是より別宮(べつぐう)迄一里【指南に「是ハミしまの宮乃まへ札所也。三島までハ海上七里有。故に是よりおがむ】。今治(いまばり)
五十五番別宮【指南に「三島宮 平地。ひがしむき」】 越智(おち)郡 大積(せき)山金剛(こんがう)院光明(くはうみやう)
寺今ハ南光坊(なんくはうぼう)と云是ハ三嶋明神を勧請(くはんじやう)す
文武天皇の御宇とかや伊豆(いつ)摂津(つのくに)当郡(たうぐん)天

下三所なり本地大通(つう)智勝仏(ちしやうぶつ)
【本尊図】此ところ見しまに夢(ゆめ)のさめけれハ
     べつくうとてもおなしすいしやく
【指南に「此間薬師堂」】是より【異体字】たいさんじ迄一里弐町。左ハ今治(いまばり)城下(じやうか)【指南に「諸事調物自由」】。
ひよし村。馬こえ村【指南に「大師堂有」】。小いづミ村
五拾六番泰山(たいさん)寺【指南に「ひがしむき」】 金林(こんりん)山此寺大師開基(かいき)本
尊地蔵坐像御長二尺四寸大師御作
【本尊図】みな人のまいりてやがてたいさんし
     らいせのいんだうたのミおきつヽ

是より【異体字】やはた宮迄十八町。行て惣■【ムシに也/蛇】川あり。
よ村【指南に「次左衛門やどかす」】。いかなし村
五十七番八幡石清水(いわしみづ)【指南に「二丁山上。東むき」】 当社(たうしや)鎮座(ちんざ)さだかならず
海中(かいちう)よりあがらせ給ふとや
【本尊図】阿弥陀 此世にハ弓矢(ゆみや)をまもるやハた也
         来(らい)世ハ人をすくふミだぶつ
是より【異体字】されい迄廿町山道小坂。やハた村
五十八番佐礼山【指南に「山上。南むき」】 千光院仙遊(せんゆふ)寺此寺天智(ち)天皇
の御願といへり本尊千手観音立像御長六尺【指南に「作者不知」】

【本尊図】立よりて佐礼(されい)の堂にやすミつヽ
     六字(じ)をとなへきやうをよむべし
是より【異体字】国分寺迄一里。にや村。松木村小川有。国分(こくぶ)村
五十九番国分(こくぶん)寺【指南に「少山上。堂南むき」】 落ち(おち)郡 金光(こんくはう)山最勝(さいしやう)院此寺
聖武(しやうむ)天皇の勅願(ちよくくはん)天下国分の列(れつ)まぎれなし
但シ今の本尊薬師坐像御長四尺行基(ぎやうき)の作也
新田義助(につたよしすけ)の墓(はか)かたハらにあり【指南に「今治御家中より石塔建立」】
【本尊図】しゆごのためとてもあがむる国分寺
     いよ々々めぐむやくしなりけり

是より【異体字】よこミね迄六里。さくらゐ村【指南に「こんや伝左衛門やどかす」】。なかさハ村是
より山路茶(ちや)や有【指南に「医王山といふ。この間山手にせた効験殊勝のやくし尊ます。過て六軒茶屋といふ新村」】。くす村【指南に「大日堂」】。中村【指南に「此所にびしやもん堂有。次道すぢ左によき井水。過て大明神河原。標石有。いにしへハ一の宮。かうおんじ。よこミねと順に札おさめしかども。一の宮を新やしき村へうつし奉るによりて。今ハ大明神がハらより右へ。よこミね。かうおん。一の宮と打」】。きたじん村だん
はら町【指南に「西にあたり紫尾山八幡ふもとに大師御作生木の地蔵霊異あげて計がたし」】。生木地蔵。新田村川有。大戸村
此所に荷物おき行。是より【異体字】よこミねへ二里。ゆ
なミ村【指南に「地蔵堂有」】。ふるほう村【指南に「地蔵堂。大戸より山路谷合」】
六十番横峯(よこみね)寺【指南に「山上にしむき」】 周布(しうふ)郡 仏光(ふつくはう)山福智(ふくち)院石仙
と云人開基(かいき)といへり本社ハ蔵王(ぞうわう)権現(ごんげん)本堂大
日如来坐像御長二尺三寸【指南に「行基作」】弥山の拝所もあり
横ミね寺より【異体字】香苑(かうおん)寺へ筋向道(すじかひみち)教(おしへ)る人多(おほ)し

益(ゑき)なし右の大戸へもどるをよしとす
【本尊図】たて横にミねや山辺に寺立て
     あまねく人をすくふ物かな
是より【異体字】香苑寺(かうおんじ)迄三里。右の大戸村へもどり【指南に「よこミねより二町のぼりいしづち山の前札所鉄のとりゐ有。これよりいしづち山へ九里。毎年六月朔日同三日の日ならでぜんぢやうする事なし。それ故まへ神寺といふ。此川有」】。
ミやうぐち村。周布(しうふ)郡かうおんじ村
六十一番香苑寺【指南に「平地。ひがしむき」】 栴檀(せんだん)山教王(きやうわう)院大師栴檀の香気(かうき)
を聞(きこ)し召(めし)造立(ぞうりつ)し大日坐像一尺二寸安(あん)じ【指南に「春日作」】教王院と云
【本尊図】のちの世をおそるヽ人ハかうおんし
     とめてとまらぬしらたきの水

是より【異体字】一のミや迄八町
六十二番一の宮【指南に「平地。東向」】 周布(しうふ)郡【指南に「新屋敷」】 天養(てんやう)山観音院宝寿(ほうじゆ)寺
と云本尊十一面観音立像一尺二寸むかし一の
宮のありしによれるかさだかならす【指南に「作者不知」】
【本尊図】さミだれのあとにいてたる玉の井ハ
     しらつぼなるや一のミや川
是より【異体字】吉じやうし迄七町【指南に「壱町程のわきに小まつの町」】。新居(にゐ)郡氷見(ひみ)村
六十三番吉祥(きちじやう)寺【指南に「平地。にしみなミ」】 密教(みつけう)山胎蔵(たいぞう)院本尊坐
像の毘沙門(びしやもん)天御長二尺大師御作なり柴(しは)井と

いひ大師加持(ぢ)の名泉(めいせん)あり
【本尊図】身の中のあしきひほうを打すてヽ
     みな吉祥をのそミいのれよ
是より【異体字】さとまへ神寺迄一里【指南に「ならの木村。石仏地蔵堂あり」と西いつミ村の前に記す】。西いつミ村。ならの
木村すぎて。たんといふ所
六十四番里前神(さとまえかみ)寺【指南に「山上。堂はひがしむき」】 新居(にゐ)郡 此寺ハ石鉄(いしつち)山へ人
つねに参(まい)る事を得す此所にて拝す石つち山を
奥前(おくまへ)神寺といひ是を里前神寺と云石つち山ハ
六月朔日より【異体字】三日迄にのぼるかねのくさりを取あ

かる所三所有蔵王権現示現の地役(ゑん)の行者(ぎやうじや)練
修(れんしゆ)の地なり大峯(みね)と同し霊験(れいけん)の山なり此寺
本尊阿弥陀作しれず【指南に「秘仏」】
【本尊図】前(まへ)ハ神うしろハ仏(ほとけ)ごくらく乃
     よろつのつミをくだく石つち
是より【異体字】三角寺迄十里。すの内村。あんちう村此間に【指南に「かも川といふ」】
川有。大町【指南に「これより五町余ひだりに西条とて城下有」】。ふくたけ村。上しまやま村。はんぎう村。
なか村。すミの村。こくりやう村【指南に「此間はらあり。池田原といふ」】川有。なかの村。せき
村【指南に「此間川有」】。うへの村。とい村【指南に「ぢぞう堂有」】。中村。小林村【指南に「観音堂有」】。つね村。のた村。

おさた村。さむ河村。ぐちやう村(せん人あり)【指南に「与左衛門やどかす。大師堂有」】。なかの庄村(せん人あり)。なかそ
ね村。かしわ村。たきのミや村牛頭(ごづ)天王薬師あり。
宇麻郡よこを村三角迄坂
六十五番由霊(ゆれい)山【指南に「三角寺 東むき」】慈尊(じそん)院本尊十一面立像御長
六尺二寸大師の御作弥勒(みろく)堂有故に慈尊院と
云三角の大師護摩壇(ごまだん)有三角寺といふ
三角寺奥院金光山仙就寺と云五十八町
坂なり高山岩場けはしき所をのほる大師
御修行(しゆぎやう)の所なり大師を本尊とす【指南に「おくの院八丁前に大久保家二三軒有。荷物おきてよし。但おくの院一しゆくの時は荷物持行。奥院本尊大師御影御自作 詠歌 極楽はよもにもあらじ此寺のミのりの声をきくぞたつとき 此所旧跡しげきをおそれりやくする也。おくの院より荷物置たる所へもどり雲辺寺へ行。大くぼ過て一昼村。それより平山村へ出る。奥院よりこれ迄山路。三角寺よりうんぺんじへすぐゆく時ハ左へ行」】

【本尊図】おそろしや三の角にもいるならハ
     こヽろをまろく弥陀をねんせよ
是より【異体字】うんへんじ迄五里。金川村内のヽ村坂有
平山村【指南に「茶屋有」】。はんた村【指南に「くハん音堂」】。りやうけ村【指南に「観音堂」】。だいを村。ねきの
お村(せん人あり)坂有此峠(たうげ)伊与阿波国境(さかい)有【指南に「大さかひとなづく」】是より【異体字】雲辺(うんへん)
寺迄二里阿波分。さの村【指南に「爰に地蔵堂并に」】阿州番所有切手
あらたむ。此所清色(せいしき)寺【指南に「とて真言」】国主(こくしゆ)より【異体字】遍礼(へんろ)人いたわり
の所うんへん寺へ五十町坂也  以上与州分
           
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