四国偏礼道指南増補大成【讃岐分】
讃州(さんしう) 廿三ケ所
六十六番雲辺(うんへん)寺【指南に「たつミむき」】 三好(みよし)郡はくち村 巨鼇(こぼう)山千
手(せんじゆ)院と云本尊千手観音坐像御長三尺三寸
脇(わき)立不動(ふとう)毘沙門(ひしやもん)ミな大師御作也此寺阿州
与州讃(さん)州三国の境(さかい)也寺ハ阿州より造営(さうゑい)せら
るといへども讃州の札所となれり巨鼇山
の額(がく)大師の御筆
【本尊図】はる々々と雲の辺乃てらに来て
月日を今ハふもとにそ見る
是より【異体字】小松尾迄二里半【指南に「一里半はくだり坂。此間池ふたつ有。ふたつめにしるし石有」】。べつそう村【指南に「此間のら」】。つし村(ぜん人あり)【指南に「文左衛門。九十一郎左衛門やどかす」】
六十七番小松尾(お)寺【指南に「東むき」】 豊田(とよた)郡 小松尾を山号とも
する寺の名ハ大興(たいこう)寺大師立給ふ本尊坐像
薬師不動毘沙門御長四尺大師の御作十二神
御長三尺二寸堪慶(たんけい)作
【本尊図】うへおきし小松尾てらをながむれハ
のりのおしへの風ぞふきぬる
是より【異体字】ことひき迄二里はら村。いけのしり村。
しゆつさく村。くわんおんじ村【指南に「調物してよし過て川ふもとに十王堂有これより琴引までさか」】
六十八番琴弾(ことひき)八幡【指南に「南むき」】 此宮(みや)文武(もんむ)天皇の御時宇佐
より移(うつ)り給ふ御舟の中に琴の音(ね)ありしにより
名づく北の宮ハ武内大臣(たけうちのしん)南ハ住吉なり
【指南に「本尊弥陀。秘仏。作者不知」】
【本尊図】弥陀 ふゑの音(ね)も松吹風も琴(こと)ひくも
うたふもまふものりのこゑ々々
是より【異体字】【指南に「贍望すれハ蒼海天と一色にして国々島々直下して右ハ有明のはま左は川みなと出入舟おほく観音まち数千の軒をならぶ。是より」】くわんおんじ迄二町
六十九番観音(くはんおん)寺【指南に「山地。堂南むき」】 七宝(しつほう)山と云本尊正観音坐像
御長二尺五寸大師御作此寺ハ大師琴引(ことひき)へ参り
たまひしとき御託宣(たくせん)によりて寺を立
八幡につかへ奉てまつらしむ
【本尊図】観音の大ひのちからつよけれハ
おもきつミをもひきあげてたべ
是より【異体字】本山寺迄一里かうち村。ながれおか村。よしおか村
本山寺宝持(ほうぢ)院と云本山の庄にあり
七十番本山寺【指南に「平地。坤むき」】 宝持院と云本山の庄にあり
故に寺の名とせるにや本尊馬頭(ばとう)観音御長二尺
五寸弥陀薬師両方にあり皆(みな)大師御作
【本尊図】本山にたれかうへける花なれや
春こそたをれたむけにそなる
是より【異体字】いやたに迄三里此辺(へん)家居(いへゐ)【指南に「よく景気」】もよし然(しか)れ
ども宿(やど)ふ自由(じゆう)なり日蓮宗(にちれんしう)の在家(さいけ)おほし。
上寺村。いせはやし【指南に「とて太神宮ます」】。かさおか村。かつま村。しん
ミやう村【指南に「少過しるし石有。観音寺よりこれまで左右なミまつ」】。ミの郡大見村善(せん)人あり【指南に「大師堂有」】
七十一番弥谷(いやたに)寺【指南に「南むき」】 剣五(けんご)山千手(せんじゆ)院といふ此山ハ
もと行基■【クサカンムリに廾】開基(かいき)大師求聞持(くもんち)修(しゆ)行の時宝
剣(ほうけん)五柄(へい)くだるが故に剣五山と号す大師岩屋(いわや)に
仏像を刻(きざみ)付給ふ本尊千手観音立像御長
三尺五寸不動(ふどう)毘沙門(ひしやもん)ならび給ふ三朶のミね
峙(そばだ)ち目に見る所皆仏像にあらすといふこと
なし人間のわさとはしられす
【本尊図】悪(あく)人と行つれなんもいやたにじ
たヽかりそめもよき友(とも)そよき
是より【異体字】まんたら寺迄一里。白方(しらかた)ぬけれハ山ごへ道有【指南に「まんだら寺へハ二王門より左りへゆく」】。
ひどの村。ミいのうへ村。よしはら村
七十二番曼荼羅(まんたら)寺【指南に「ひら地。堂ハひがしむき」】 我拝師(わかはいし)山延命(ゑんめい)院と云
此寺ハ大師善通(せんつう)寺を成就(しやうじゆ)なされ次にたて給ひ
七仏薬師の像を作り金堂(こんだう)にすへ給へり本堂ハ
大日如来坐像御長二尺五寸此所に【指南に「寺より三町西に」】西行法師
寓居(くうきよ)あり是を水茎(みつくき)の岡といふ【指南に「其所にてよめりけりとて 山里にうきよはいとハん友もながくやしく過しむかしかたらん 又堂のまへに笠かけのさくらとて有。おなじ人のよめるとて 笠ハ有その身ハいかに成ぬらむあわれはかなきあめが下哉」】
【本尊図】わつかにもまんだらおかむ人はたヽ【濁点】
ふたヽひミたびかゑらざらまし
是より【異体字】しゆつしやか寺迄三町
七十三番出釈迦(しゆつしやか)寺【指南に「少山上堂有。ひがしむき」】我拝師(わかはいし)山此所大師御行道所
有又捨身(しやしん)の岡(おか)有大師御しゆぎやうのとき釈
迦によらい影現(えうげん)したまふにより出釈迦
といふ西行山家集(さんかしう)に其ほとりの人ハ
わかハしとそ申ならひをるとてあり
【指南に「本尊釈迦 秘仏。御作……中略……ほかに虚空蔵います。此寺札打所十八町山上に有。しかれども由緒有て堂舎なし。ゆへに近年ふもとに堂并に寺をたつ。爰にて札をおさむ」】
【本尊図】釈迦 まよひぬる六道衆生すくハんと
たつとき山にいつるしやかでら
是より【異体字】かうの山寺迄三十【異体字】町。ひろた村
七十四番甲(かうの)山寺【指南に「山をうしろにし堂ひがしむき」】 医王(いわう)山多宝(たほう)院と云本尊
薬師坐像御長二尺五寸大師御作なり
【本尊図】十二神みかたにもてるいくさにハ
おのれとこヽろかぶと山かな
是より【異体字】ぜんつう寺迄十町。此間大師遺跡(ゆいせき)多(おほ)
し。多度郡(たとこほり)善通寺(せんつうじ)村
七十五番善通(せんつう)寺【指南に「堂壱町東に南むき」】五岳(ごがく)山誕生(たんしやう)院此所屏風(べうぶ)が
浦と云則(すなはち)大師御誕生の地なり五岳ハ峙(そばた)つ峯
五つあるによれり善通(せんつう)ハ大師の父(ちヽ)の名のりを以て
寺の名とし給へり御誕生の地ハみゑい堂のうし
ろにあり種々(しゆ々々)大師の遺跡(ゆいせき)あり本尊薬師
坐像御長丈六尺大師御作なり【指南に「本尊薬師 坐四尺五寸。大師御作」】
【本尊図】我すまハよもきへはてしせんつうじ
ふかきちかひの法のともしび
是より【異体字】こんぞうし迄廿町。こんひらへかくる時ハ爰(こヽ)に
荷物おき行一里半【指南に「しるし石有」】。上よした村。下よした村
七十六番金倉(こんそう)寺【指南に「平地。堂ハひがしむき」】 鶏足(けいそく)山宝幢(ほうどう)院又ハ道善
寺とも云此寺ハ智證(しやう)大師誕生の地なり
智證大師ハ弘法大師の御おいなり本尊薬師
如来坐像御長一尺八寸智證の御作三井寺
以前のこんりうなり
【本尊図】まことにも神仏僧をひらくれバ
真言(しんごん)加持のふしぎなりけり
是より【異体字】道隆(たうりう)寺迄一里。かつら原村。かも村
七十七番道隆(だいりう)寺【指南に「平地。堂ハ東むき」】 桑田(さうでん)山明王院本尊桑の
木の小像なりしを大師今の薬師立像二尺五
寸の内へ作りおさめ給ふといへり
【本尊図】ねがひをハ仏道隆(たうりう)に入はてヽ
ぼだいの月を見まくほしさに
是より【異体字】道場寺(だうばし)迄一里半。なかづ村【指南に「石仏の地蔵堂有」】川有。しほや村【指南に「ひだりの方にて神のミや」】。
丸亀(まるがめ)城下(じやうか)【指南に「町中に橋有。左ハみなと。調物自由」】。とき川より【異体字】西ハ丸亀ひがしハ高松領(れう)
過て海辺(うみべ)。鵜足(うたつ)町
七十八番道場(とうちやう)寺【指南に「少山上。堂ひがしむき」】 鵜足郡江照寺と云本尊
阿弥陀坐像御長一尺八寸大師御作
【本尊図】おどりはね念仏申たうぢやうじ
ひやうしをそろへかねを打なり
是より【異体字】しゆとく天皇迄一里半。うたつ村。さかゐ
で村【指南に「塩釜あり。なミ松。野沢の水霊水。五丁山上に医王善逝石仏大師の御作。この尊を木壇にあんぢし奉れバ野沢の水湧出ず。よて石座におき奉るよし」】。八十八(やそは)の水石仏の薬師大師の御作也
河野郡北西庄村
七十九番崇徳天皇(しゆとくてんわう)【指南に「山地。堂南向」】寺ハ妙成就(みやうじやうしゆ)寺金花(きんくわ)山
摩尼珠(まにしゆ)院と云大師御開基(かいき)本堂十一面観
音立像御長二尺三寸也【指南に「作者不知」】崇徳天皇崩御(ほうぎよ)あそ
ばされし時金棺(きんくわん)しハらくこヽにおき奉りしより
爰にも御廟【マダレに苗】を立といへり別(べつ)に鎮守(ちんじゆ)あり
【本尊図】しやうらくのうき世の中をたづぬべし
天皇さへもさすらへぞある
是より【異体字】国分寺迄一里半。あや川名所也。かも村
あい坂。河野郡国分町
八十番国分寺【指南に「平地。堂南むき」】 白牛山千手院と云此寺聖武(しようむ)
天皇の詔(みことのり)当国の国分寺紛(まぎれ)なし今の本尊
千手観音立像御長一丈六尺大師の御作
【本尊図】国をわけ野山をしのぎ寺々に
まいれる人をたすけましませ
是より【異体字】しろミね寺迄五十町。坂有国分坂といふ
谷川あり。河野郡南青海(あおみ)村
八十一番白峯(しろみね)寺【指南に「山上。堂坤むき」】綾松(れうせう)山洞林(とうりん)院と云大師の
開基(かいき)也補陀洛(ほだらく)山より来る霊木(れいほく)を以て本尊
千手観音を作る智證(ちしやう)大師の作立像御長
三尺三寸也崇徳(しゆとく)天皇を此山にほうむり奉
つる御廟【マダレに苗】けつこうなり
【指南に「此寺に児が岳とて百余丈のたけ有。延宝年中ミな月のそら。後の備州やすな郡そね原の宝泉密寺の雲識とし十八。高祖のいときなき捨しんの御ちかいをやまねびけん。此岳よりとびおちけるに。うつヽに黄衣したる僧半腹にましてとけうけ玉ふ事。ふたヽびミちとをる賈人此寺の蒼髻形容を見つけ駭き汗して告こたえけるほどに。人々あつまりふためきしに。おもひもよらぬうしろの谷より。つたひ道もなき百余丈の底を飛出て来にけり。仏神のふしぎ愚意の及ぶ事にあらず」】
【本尊図】霜(しも)さむく露(つゆ)しろたへの寺のうち
ミなをとなふるのりのこゑ々々
是より【異体字】ねごろじ迄五十町【指南に「山路にして村なし。此間にいちの宮へのしるし石あり」】
八十二番根来(ねごろ)寺【指南に「さんじやうの堂。みなミむき」】 青峯(あをみね)山千手院と云此地大師
開(ひら)き給ひ千手観音立像御長三尺八寸に作り
給ふ後(のち)智證(ちしやう)大師も遊息(ゆふそく)し給ふとなり
【本尊図】宵(よい)のまのたへふるしものきへぬれバ
あとこそかねのごんぎやうのこゑ
是より【異体字】一の宮まで二里半【指南に「しるし石有」】。山口村。飯田(いヽだ)村【指南に「八まんの宮過てかうどう」】川有。小山
村。なりあい村。かヽ【濁点】ハ郡一の宮村
八十三番一之宮【指南に「平地。堂はひがしむき」】 蓮花(れんげ)山大宝院と云本尊聖観
音立像御長三尺五寸大師御作也宮ハ前に別(べつ)に
一構(かまへ)あり田村大明神と号(がう)す猿田彦(さるたひこ)の命(みこと)と云
【本尊図】さぬき一のミやのみまへにあふきして
神のこヽろをたれかしらゆふ
是より【異体字】やしま寺迄三里。但シ仏生山へかくる時ハ
一の宮より【異体字】屋しまへ三里半。又高松城下へ行バ一の宮
より屋しまへ四里なり。かのつか村。大田村【指南に「八幡。標石有」】。ふせ
いし村、まつなわ村【指南に「行て大池有。堤を行」】。北村【指南に「三十番神宮有。過て小川有」】。ゑびす村。かすが村。
かた本村是よりやしま寺へ十八町【指南に「坂。地蔵堂有」】
八十四番屋嶋(やしま)寺【指南に「山上。堂はミなミむき」】やまた郡南面山千光院と云
此寺孝徳(かうとく)天皇天平宝字(ほうじ)年中大唐(とう)より来
朝(らいてう)せる鎮真(ちんしん)和上(をしやう)登臨(とうりん)してひらき給ふといへり
大師こヽにいたりて千手(せんしゆ)千眼(げん)大悲(ひ)の像を刻(きさみ)て
本尊とし千手院と号す
【本尊図】あづさ弓(ゆみ)やしまの宮にまふてつヽ
いのりをかけていさむものヽふ
是より【異体字】やくり寺迄一里。東坂十町くたりて佐藤次
信(さとうつぐのぶ)墓(はか)あり【指南に「領主より壱丈四方の切石にて壇きづき。其上に五尺の石塔を建立し碑の銘あり。古の五輪塔も有。後小松の御宇。崇徳元年四月五日に奥州より佐藤氏族のしやもん空信此はかに詣来て回向のまことをつくし いたはしや君の命をつぎのふが印の石は苔ころもきて とよまれけれバそとば動揺して をしむともよも今までハながらへじ身をすてヽこそ名をバ次信 とはかの中にこゑしけるよし。屋島軍ゑんぎに見えたり。それより先帝女院行幸の内裏の跡有。この所を壇となづけ。浦を壇の浦となづく。又あい引の汐にしひがしより汐ミち南面山のふもとをめぐり両うミの中辺にて満合たがひに引なり。此入うミ三町ばかり渡りて奈須の与市駒立岩有。又いのり石有。其南脇にすさきの堂本尊正観音大師御作其南に惣門。次信射をとさるヽ所有。大夫黒といふなん馬のはかも有。或ハさじきの岡。名切水并に瓜生山とて源氏の本陣所あり。其外旧跡かず々々有。惣名はむれ村といふ右の惣門よりやくりへ十八町行て坂」】洲崎(すさき)の堂観音大師御作瓜生(うりう)山
とて源氏の本陣(ほんぢん)所あり惣してこヽを
むれ村と云
八十五番八栗(やくり)寺【指南に「山上堂有南向」】 三木郡五剣(ごけん)山千手院といふ
此山嶮岨(けんそ)の峯(みね)也大師求聞持(くもんち)を修(しゆ)行し給ふ
時利剣(りけん)五柄(へい)空(そら)よりくだる故に五剣山といひ
大師入唐(につとう)の前試(こヽろみ)にやき栗(くり)八枝うへ給ひしに
生長せしにより八栗寺と云本尊正観音御
長五尺大師の御作社ハ蔵王(さわう)権現
【本尊図】ぼんのふを胸(むね)の智火(ちくわ)まてやくりをバ
しゆぎやうじやならでたれかしるべし
【指南に「おくの院へハ四丁山上のぼる」】
是より【異体字】志度(と)寺迄一里。たい村(せん人おほし)【指南に「皆々志有やどかす。此所に道休禅師がはか有。此禅門ながく大師に帰命し奉り。はき物せずしてじゅんれいする事十二度すべて二十七度の遍路功なりて。つゐに身まかるとて いままでハとをき空とぞおもひしにとそつの浄土其まヽの月 皆々御回向頼たてまつる」】。大町村。しど村(せん人あり)【指南に「町の西に園子尼の寺有。本尊むんじゅ。ひがし寺町庄三良やどかす。この所より先一日路。米なき時有。こヽにて調てよし」】
八十六番志度(しと)寺【指南に「南むき」】 補陀洛(ほだらく)山清浄光(しやう々々々【濁点】くはう)院閻魔(ゑんま)
王の草創(さう々々)願主(ぐはんしゆ)園小尼ハ文殊■【クサカンムリに廾】(もんしゆぼさつ)の化身(けしん)也
推古(すいこ)天皇勅願(ちよくくわん)寺となされ藤原房前(ふぢはらのふささき)
公(こう)行基(きやうき)■【クサカンムリに廾】とともに復基(ふくき)し給ふ本尊
十一面立像御長五尺二分観音御自作(じさく)
【本尊図】いさヽらハこよひハこヽにしとのてら
いのりのこゑをみヽにふれつヽ
是より【異体字】長尾(なかお)寺迄一里。なかゆく村。ミやにし村
八十七番長尾寺【指南に「平地。南むき」】 さむ川郡 補陀洛(ほだらく)山観音
院此寺聖徳太子(しやうとくたいし)開基(かいき)と云大師後に紹隆(しやうりう)し
立像御長三尺二寸の聖観音を作りおき給ふ【指南に「本尊正観音 立三尺六寸。大師御作」】
【本尊図】あしびきの山鳥の尾のながおでら
秋のよすがら弥陀をとなへよ
是より【異体字】大くぼ寺迄四里。まへ山。かく村。こヽに大
師御修法(しゆほう)の所あり【指南に「爰にごま山とて大師御すほうの所有。経坂ともいふ過て小坂有」】
八十八番大窪(くぼ)寺【指南に「山地。堂南むき」】 医王(わう)山遍照(へんしやう)院此寺開基(かいき)
行基■【クサカンムリに廾】といへり後に大師復基(ふくき)し給ひ本
尊薬師坐像三尺に作り給ひ医王山と云
○奥院ハ本堂より十八町のぼる岩窟(がんくつ)本尊
阿弥陀観音大師こヽにて求聞持(くもんぢ)修行(しゆぎやう)あ
そバされしとなり 以上讃州分
【本尊図】南無薬師しよひやうなかれと願つヽ
まいれる人ハあふくぼのてら
白鳥宮へさんけいの人ハ爰(こヽ)にて問(と)ふて
行べし道筋(みちすし)拝見(はいけん)所もあり
○是より【異体字】阿州きりはた寺迄五里。なかの村
是迄一里讃岐(さぬき)分。いぬかけ村是より阿州分
いぬのはか村。ひかいたに村番所あり切手あ
らたむ。大くぼ寺より是迄山路谷川あ
またあり。是より【異体字】きりはた寺迄一里
願以此功徳 普乃於一切 我等与衆生 皆共成仏道
四箇国総(なべて)八十八箇
同 二十三ケ所 阿州
道法(みちのり)五十七里半三丁 四十八丁一里
同 一十六ケ所 土州
道法九十一里半 五十丁一里
同 二十六ケ所 豫州
道法百十九里半 三十六丁一里
同 二十三ケ所 讃州
道法三十六里五丁 三十六丁一里
道法都テ三百四里半余
【指南に「大師御辺路の道法は四百八十八里といひつたふ。往古は横堂のこりなくおがミめぐり給ひ嶮岨をしのぎ。谷ふかきくづ屋まて乞食せさせたまひしがゆへなりと云々。今ハ劣根僅に八十八ケの札所計巡拝し。往還の大道に手を拱御代なれバ。三百有余里の道のりとなりぬ。巡礼のはじめたる事。其源不生なり。其功修多羅の中に説がごとし。こヽをもて俊秀たる高衲いにしへに徘徊し錫々たる智杖今の世に絡繹たり。わが遍照金剛。道を李唐に得玉しより。其分身くじらよる浦。善知鳥飛濱まで勧善懲悪の迹。今世にのこして。金【会カ】津の塩。唐濱の貝。ひとり焼種の胆をひやす。就中南海四国ハ詫生有縁のところにして八十八箇の精舎歴々とし緇素老若今に歩を運ぶ。某甲其流に浴する事年久し。ひとヽせ大師八百五十年忌の春。宿願弥芽し。四国辺路道しるべをし。うゐ参の翁にしひがししらぬ女わらべにたよりせむと。筆を手にし巡礼かず度して。一まくりの反古を懐く。しかし神歌の疑しき字つづき。いち里塚のわがなき道法かへて。人のまどひとやならむと。既に覆醤とせり。こヽに野口氏我功のなる事をよミして、剞■【厥にリットウ】氏に命じて。四国辺路道指南となりぬ。願者此功徳普及於一切我等与衆生皆共成仏道 ■【山にナベに日】貞享丁卯冬十一月 宥弁真念謹白 梓工傭銀喜捨 大坂西濱町野口氏木屋半右衛門 本願主 同所寺島 宥弁真念房 本出ス所 大坂北久太郎町心斎橋筋 本屋平兵衛」】
四国■【ギョウニンベンんに扁】礼細見大の図折本一冊
同 小の図折本一冊
御城下国境名所旧跡くわしく絵図に
あらハし候御もとめ可被下候
同御詠哥道案内 全壱冊
弘所阿州十八番札所恩山寺ノ隣釈迦庵
文化十二年亥十一月求板
大坂ばくろ町筋難波橋西へ入
大坂書林 糸屋七五郎求板
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