四国遍礼霊場記
 
▼十楽寺(七番)
 

 
 板野郡土成村にある。寺の由来は分からない。本尊は阿弥陀如来。恐らく、この寺に来れば、去此不遠の状態になる、すなわち阿弥陀如来が主宰する極楽の上品蓮に往生するとき、この身のままだという、去此不遠の状態になると、言いたいのだろう。寺の背後には、険しくない山があり、松風が常に通っている。前面に田が美しい布のように広がっている。訪れる人は、風景を楽しむ心の必要性をさとり、俗事が空しいものだと思い至る。


前略……今挙十楽而讃浄土、猶如一毛之?大海、一聖衆来迎楽、二蓮華初開楽、三身相神通楽、四五妙境界楽、五快楽無退楽、六引接結縁楽、七聖衆倶会楽、八見仏聞法楽、九随心供仏楽、十増進仏道楽也(「往生要集」巻上)。

十楽

聖衆来迎楽 安らかな死に臨んで阿弥陀三尊はじめ諸仏や天人天女が極楽から迎えに来る幸せ。

蓮華初開楽 極楽に生まれ変わって、素晴らしく美しい蓮華を開くところを初めて見る幸せ。

身相神通楽 五通(神足通、天眼通、天耳通、他心通、宿命通)などの神通力や仏が有する特徴・三十二相が身に備わる幸せ。

五妙境界楽 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚ともに最高度に満ち足りる、素晴らしい環境にある幸せ。

快楽無退楽 この世にないほどの快楽が永遠に続く幸せ。

引接結縁楽 互いの心が結ばれ睦まじくする幸せ。

聖衆倶会楽 上善の仏と共にある幸せ。

見仏聞法楽 仏を目の当たりにして真理を聞く幸せ。

随心供仏楽 心のままに仏を供養する幸せ。

増進仏道楽 仏性が徐々に高まり続ける幸せ。

五通
神足通 どこにでも行ける能力。
天眼通 何処にあるものでも何でも見える能力。
天耳通 どんなに遠くのものでも聞こえる能力。
他心通 他人の心が完全に理解できる能力。
宿命通 自分や他の人の過去を眼前にするが如くに知る能力。

                          
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